そうして早川さんは、どこかホッとした様子で事務所を去ったのだった。 「何でございましょうか、さっきの男は」 私よりも怒りを顕わにしたのは滝山だった。 出て行ったドアに向けて、塩でもまくような仕草をする。 「北見さんも笑いましたよね?」 私は見逃さなかったんだから。 「いや、あれは仕方ないだろう? なぁ、銀さん?」 滝山に助けを求める。 「いえいえ、笑いごとではございませんぞ」 そうよそうよ。 滝山に激しく賛同。