薫子様、一大事でございます!


――ど、どうしよう!


バイクは二度目なんだし、こういう体勢は確かに初めてじゃない。



でも。
前回は相手が滝山だったのだから。


父親と同年代の男の人。
北見さんとは訳が違う。


体験したこともないほどにドキドキと早鐘を打つ鼓動。

どうしたらそれが収束してくれるのかすら分からなかった。


「いいか? 絶対にこの手は放すなよ?」


ヘルメットで重い頭をブンブンと前に振る。


その弾みで北見さんのヘルメットにゴツンとぶつかってしまった。