「田中さん」
「…は、はい」
「もう大丈夫?痛いとこない?」
「…うん」
「そっか」
そして次に三鷹くんは和久井くんに視線を移す。
「和久井」
「……」
「とりあえず今すぐその手を離して」
「っ、ごめん…!」
今まで掴んでいた私の手を、和久井くんは慌てて離す。
「お前さ、田中さんにボールぶつけておいて保健室でいちゃつくなんてどういうご身分なの」
「い、いちゃついてねーよ!」
「言っとくけど絶対渡さないよ」
「……っ」
グッと拳を握り締めた和久井くんはベッドの横に置いていた椅子から立ち上がって、
くるりと私を振り返った。
「田中さん!ぶつけてほんとにごめんね!」
「あ、う、うん」
「そんで三鷹もごめん!でも俺諦めれないかも!」
「…は?」
意味不明なことを言ったかと思うと、和久井くんは保健室を走って出て行ってしまった。
しーんとした保健室に取り残された私と三鷹くん。
…なんか、つい最近にもこんな状態になった覚えが…。
「……」
「田中さん」
「…え?」
「明日から紙袋でも被って学校来てよ」
「…はい!?」
死んでも嫌ですけど!?
突然何!?
私が怪訝な顔を浮かべていると、三鷹くんはハァと大きく溜息をついた。
「面倒事が増えたよ」
「…?」
「…不愉快だけど、田中さんは馬鹿だから仕方ないね」
…えぇ…?
な、なんなんですか…?