「でもなんで田中さんなんだ?普通じゃね?」
「ばっかお前、あの三鷹が惚れるくらいだぞ。なんかすっげぇ良いとこあるんだろ」
「実はエロいとか?」
「…あのさっ」
俺が話を遮るように声を上げると、皆は俺に視線を移した。
「た、田中さんはそういう人じゃないと思う」
「…え、どうした急に」
「やっぱり直哉、田中さんのこと好きなんじゃね?」
「…さあね!もうこの話やめよ!ご飯食べよ!」
注文してた皆の料理が出されたので、俺は自分の分を取って先に席を確保しに行く。
「…直哉が恋愛関連の話を自分からやめようなんて…」
「これはいよいよ春到来だな」
後ろからそんな声が聞こえてきたが、俺は無視してスタスタ歩いた。
…俺がこんなに恋愛ごとに敏感になったのは兄貴の影響が大きいと思う。
いつも家に彼女を連れて来ていた兄貴。
でもその彼女は数週間で変わっていたり数日で変わっていたりしていて、兄貴はとっかえひっかえしていて。
彼女なんてなかなか出来なかった俺はひどく兄貴に馬鹿にされていた。
『お前彼女作らねぇの?寂しい奴〜』
『お子様は一人で遊んでな〜』
『俺が紹介してやろうか?(笑)』
悔しくて、その反面羨ましくて、俺はこうなってしまったんだと思う。
彼女は欲しい。
でもそれは寂しさと劣等感を紛らわさせたいからかもしれない。
…だから付き合った彼女にもすぐ振られて。
俺は焦ってた。
「…くそっ」
ガシャンと音を立ててプラスチックのトレイをテーブルに置く。
…田中さんはもう三鷹のものなんだ。
今更もう遅い。


