「……」
止まることないその背中を見上げたまま歩くこと数分。
足早に進んで行く彼は一体どこに行こうと言うのか。
私は遂にそんな背中に言葉を放った。
「…み、三鷹くんっ」
「……」
私の声を聞いて、ピタリと足を止めこちらを振り返る三鷹くん。
少し乱れた息を整えつつ、私は三鷹くんを見上げる。
「ど…どこ行くの?」
「……あぁ、そっか」
やっと口を開いた彼は、少しハッとしたように口元を片手で覆った。
…?
「このまま田中さん家まで送るつもりだったけど、急ぐ必要はないね」
「…そうですね」
すると三鷹くんは、先程とは比べ物にならないほどゆっくりとしたペースで歩き出す。
…三鷹くん。
そんなペースのまま行くと、帰るのだいぶ遅くなりそうだよ…?
そう思いながら、私はちょこんと三鷹くんの隣を歩き出した。
三鷹くんの隣は落ち着く。
…しかし、今日はあんまり三鷹くんが喋らなくて、なんだかソワソワしてしまって。
私は一番聞きたいことがまだ聞けない。
〝藤本さん〟
「…さぶっ」
ヒュウと冷たい風が肌を撫で、私は思わずブルっと震える。
あ、マフラー。
ふと鞄に仕舞っていたマフラーのことを思い出し、そそくさと取り出して首に巻いた。
その一連の流れを三鷹くんは全て見つめていて、
「…それ、ほんとに使ってくれてるね」
白い息を吐きながら、彼は静かにそう言った。
「当たり前じゃんっ。ていうか昨日からずっと着けてるよ」
「うん、知ってる」
「そ、そうですか」
「あったかい?」
「…え?あ、うん。すっごく」
「…そっか」
その短い返事に続きはなく、再びやってくる沈黙。
チラリと顔を見上げても、三鷹くんは自分のマフラーで口元を覆っていてよく表情が見えない。


