――何も考えずに二人でいろんな話をしながら歩いていると、いつの間にか私の家に着いていた。







「…あ、あれ?私の家だ」



「君の家だよ」



「……もしかして、送ってくれたの…?」



「いつも気遣ってるって言ったでしょ」








三鷹くんは一枚上手だった。



まさか私が気付かない内にこんな気遣いをしていたなんて…。


こういうとこはほんとに王子様だね。








「あ、ありがとう」



「どういたしまして」



「…そうだ、家でご飯食べてく?お母さんも喜ぶだろうし…」



「…え」








せっかく送ってくれたし、少しは私のお母さんに会えるかもって期待しているであろう三鷹くんを私も気遣ってみた。



しかし三鷹くんは少し間を置いた後、軽く首を横に振った。








「ううん、今日は遠慮しとくよ。それに俺、田中さんの奥さん狙いで送ったわけじゃないし」



「…え、そうなのっ?」



「怖い夢見ないようにね。おやすみ」









そう言い残して、三鷹くんはくるりと踵を返して歩いていってしまった。




怖い夢って……。
















〝ホラー映画観た後だと夜道ちょっと怖いね〟













もしかして、私が怖がらないように…?



あんな言葉まで気にかけてくれてたのかな…。




都合良く考え過ぎなのかもしれないけど、もしそうだとしたら三鷹くんは相当紳士的だ。






…毒舌最低魔人だけど、紳士的だ。








なんだかにやけそうになり、私はブンと首を振って家の中に入った。