私は目を見開いたまま呆然とする。
…あの三鷹くんが、
私を映画に誘った…?
そんな馬鹿な。
「え…いが?」
「…うん」
「それ本気なの…?」
「…うん」
本人曰く、本気のようだけど。
…え、ほんとに?
三鷹くんは私を誘ったんだよね?
「何か観たい映画あるの?」
「……いや特には」
更に謎である。
三鷹くんのことだから何か理由あってのことだろうけど…。
なんだか三鷹くんの様子が明らかにおかしい。
いつもの余裕そうなオーラがない。
「…全然私はいいけど……三鷹くん大丈夫?」
「何が」
「いや、別に…」
まあいいか。
知ったところで私に拒否権なんてないだろうし。
そもそも三鷹くんの考えてることなんていつも分かってないんだから。
「あー、じゃーあれ、ホラー映画やってるよちょうど」
私がそう切り替えて言うと、三鷹くんはさっきより落ち着いた表情を見せた。
「ホラー映画か…田中さんホラー好きなの?」
「いや普通。でも結構人気らしいから」
「じゃあそれで」
ニコリといつものように笑顔を見せた三鷹くんに、私はホッと安堵した。
三鷹くんが調子出てないと私も変な気遣いしちゃうわ。
「そこいつまで喋ってるー」
ギクッと肩を跳ねさせて前を見ると、先生がこちらをギロリと睨んでいた。
そういえば今授業中だった…!
私と三鷹くんは話すのをやめ、大人しく授業に戻った。