帰ってきたライオン


「見せて」

と言って箱に手を伸ばす。
羊君はひょいとかわして私の手から箱を死守した。が、次の瞬間には箱は羊君の手を離れ、松田氏の手中に収まっていた。

「羊さん、隠し事ですか今更」

「おい、返せって」

「むきになるところが怪しいんですよ」

「むきになんてなってねーし」

「そういうところですって」

「返せ!」

「共同生活において、この場合、羊さんはただの同居人じゃなくて、成田さんと深い仲だったんですよ。あまり言いたくはないんですけど。で、ここでの隠し事はご自分の首を絞めることになります」


松田氏はそれでも取り返そうとする羊君を華麗にかわし、箱の中を開けようとした。


「無理無理無理無理無理絶対に無理!」


その慌てっぷり、絶対何かある。直感でそう思った。

「羊君、諦めなさい! 松田氏、パス!」


台所に素早く移動し、平手を打って松田氏に箱を投げてと伝える。箱は放物線を描いてくるくるとゆっくり回りながら私の元へとやってくる。

その先で羊君が急いで走るのが見えた。松田氏は箱を目で追っていて、

スローモーションですべてがゆっくりと流れた。

ぱふっと乾いた音を立ててたどり着いた箱の半開きになっている蓋に手を入れ中身をつかむ。

固い。冷たい。四角い。ん?

箱がするりと床に落ち、私の手元に残ったのは……

写真立て。

真ん中には金髪の小さい子供、左には子供と同じ金髪の外人の女性。右には……微笑んでいる羊君、



外人、子供、羊君、
外人、子供、羊君、
外人、子供、羊君……



エンドレスに回る言葉に頭の中がぐるぐる揺さぶられ、何がどうなっているのか考えられなかった。

まさか。

いや待て、そんなことは考えたくない。

でも……

五年の年月が経っているわけだ、そしてその間いっさいの連絡がなかったわけで、子供をもう一度よく見た。

やはり四歳、五歳くらいってところか。

最終的な最悪な感は当たるのか。
そこはさすがにハーフハーフだと信じたい。

羊君の口から何が飛び出すのか怖いけど、少なくともあと数秒ののちには答えが聞かされる。