帰ってきたライオン


予想はついたが、土曜日になっても羊君は帰って来なかった。

昨日のカレーは二日目に差し掛かり、旨み成分はトントン拍子に増していて、更に舌をとろけさせる。

このカレーが食べられないなんてもったいない。と、考えるだけ考えながらカレーをすくってスプーンを口へ運ぶ動作を繰り返していると、

「成田さん、ちょっと水と調味料がなくなりそうなので、買い出し行きませんか。ざっと買い込みましょう」

「いいねそれ、朝ごはんのパンもなくなりそうだし、天気もいいし、行こう行こう」


車で40分も走れば郊外に無駄にデカい大型店がある。
松田氏は車を持っていて、このアパートの横にあるパーキングに止めてあるということを知ったのはつい最近のことだ。

車があれば少し遠くまで行けるし、荷物も詰めるから買い物もまとめてできるのにねーと何気なく言ったところ、

『車ならありますよ』

と、これまたふつうに返ってきた。

紺色の普通のフォードアのセダン。

少々おっさんかと思われる車だったが、背もたれによくあるほらあれだ、木でできた丸いつぶつぶがつながったすだれのおばけのようなものがかけてないだけよしとして、私たちは近場の大型店に向けて車を走らせている。


話は戻って、羊君からはなんの連絡もない。
私の電話番号は知らせてある。

しかしだ、一度もかかってきたことはないので私は今の羊君の電話番号は知らない。

でも家に荷物も置いてあるし、ま、そのうち帰ってくるもんだろうとあまり深く考えていなかった。

確かに土日だし、誰かと会っているのかもしれない。
いやいやもう終わったことだ。過去だ。羊君にだってきっぱり言ったじゃないか。もやもや押し寄せる心騙してかぶりを振った。


そういえばあの時、強引に松田氏を巻き込んでしまったけど、あれから何も言われてない。

私のとっさのあれだということで自分の中で消化してしまったんだろうか。

それともなかったことにしているのか。はたまた……もしかしてすでに付き合っているとかそんな感じで思っていたりして。

ここはちょっといい機会かもしれない。
聞いてみるにはもってこいな時間。いやはや待て待て、意を決して聞いてみて自分の考えすぎってことにもなるかもしれない。
いやでも聞いてみなければ分からないことだってあるはず。
いやはやそれはやぶ蛇か。



「成田さん、着きましたけど、まだ明後日な話を考えてます?」

「ついた?」

すでにパーキングに停められていて、松田氏はこっちを見て笑っている。エンジンはつけっぱなしになっているけれど、これも気を使ってくれてのことだっていうのが分かり、ほっこりする。


この人のこの野菜のような安心感が好きだと思った。