帰ってきたライオン


永遠に乗っているのかと思われるほど長い時間エレベーターに乗っていたような気がした。

外で待っている羊君のことを思えばのこと。
会いたいような気もするけど、会いたくないような気もして、複雑な心境は拭えない。

一階に着く前に気分を落ち着かせて一度目を閉じて視界を真っ暗にした。

次に目を開けた時には丁度ドアが開いていくところ。

「よし」と、小さく発し、口角上げて一歩外へ踏み出した。




頃は1月の半ば。
これから更に寒さは増して冷え込み、雪なんぞも降り始めるに違いない。

空気はかっさかさに乾燥し唇は乾ききってしまって割れる。喉は毎日痛み、空咳が喉を針で刺す。そんな頃。



コーヒーショップはすぐそこだ。
羊君がどこにいるのかと辺りを見回したけど、どこにもいない。店内にいるのかと中に踏み込めば、暖かい空気とコーヒーの香りが癒してくれてほっとする。

するな。

まだほっとするところじゃない。


これから話し合いという重大な難関が待ち構えているんだ、ここで気を抜いたら後々なあなあになる。

がしかしだ、コーヒーショップの中も外も、どこを探しても羊君はいない。

なぜだ。まさかの帰ったとか?
いやいや終わるまで待ってるって言ったのは羊君のほうだ。ってことはここにいるはずだ。

他にコーヒーショップは無い。ここで間違いはないはずなんだけど、どうしたんだ。

とりあえず、店内一周、トイレ前の確認、外のテラス席のチェックをしてみたが、いない。

もしかしたら何か買い物に行ったのかもしれない。

ここはひとつ、Sサイズのコーヒーを買って、入り口付近に座り店内も店外も見渡せるところに陣取ってコートを脱いだ。