虎野羊。
そこに、私の目の前には、音信不通になったはずの羊君が立っていて、目をまん丸くして驚いていた。
それは私だって同じだ。
昔の羊君は白かった。昔からジム通いが趣味だったから体は筋肉質だったけど、短く整えた黒髪は清潔感があって、スーツもイングランド系のビシッとしたものを好んでいたはずだ。
しかしだ、今目の前にいるのは浅黒く日焼けした無駄に白い歯の目立つ、茶髪でチャラめの羊君。
清潔感は無く、ほのかに香る香水は遊び人の男がつけるようなものだ。
かける言葉が見つからない。
いや、この何年かの間に考えていたこともある。
会った瞬間に言うこと、聞くこと、それから最後に怒ること。でも、今、目の前にその状況が提示されると、考えていたことなんてすっぱり頭から飛んでしまった。
口、ぱくぱくして喉から声がもぎ取られたようなそんな感じで、何の音も出ない。
羊君の顔には戸惑いと焦りと少しの動揺が浮かび上がっていた。
そこには、『私に会えて嬉しい』って感情はなかった。
しばらく顔を見ていたけれど、それでも『私に会えて嬉しい』という感情は読み取れなかった。
私の感は当たる。
良いこともそうでないこともたいがい当たる。
この感には何度となく助けられたし、そのおかげで予防線を張ることだってできた。
今回もそう。
羊君の中に私はいない。そう感じたらもうまっすぐ目を見られなくなった。切ないから。
ふと視線を下げて下を向き、この場から去るか、でも去ったらもう二度と会えないという『勘』もあって、どうしていいか分からなかった。
「美桜」
「……」
懐かしい声に反応し、咄嗟に羊君の顔を見上げていた。

