そもそも松田氏とはどんな人物なのか。
どうやらいいとこの大学を出てこの会社に入ったらしい。
詳しくは知らないが上田さん情報によるとそれで間違いない。
本当は大学院に行きたかったんだがその後のことを考えて、行くのをやめて働くことを選んだという。
そこまでの経緯は知らない。とりたてて聞く必要もないだろう。
外見はいい部類だと思う。今うっすら流行っている中性的なかんじで臭さを感じさせない爽やか洗剤のような清々しさがある。
清潔感溢れる松田氏は例えるならば石鹸だろう。
背も高い足も長い腕も長い、おまけに顔も小さい。目鼻立ちもいい。白くて細いもやしなところを除けばモテそうなものだ。
そして永世中立国家のような立場にあり、争いをとことん嫌う。
つい最近、近所に昔からたむろっている野良猫が二匹、睨み合ってニャーゴロニャーゴロと牽制し合っているのを見て、
「喧嘩はやめなさい。仲良くしてください」と、本気で猫に話しかけていた。
それを私は細い目で眺めていた。
確かに上田さんが言っていた通り、社内には松田氏ファンもいて、なんちゃら同盟くんだりも存在していた。なぜ女子はすぐグループになってつるみたがるのか、いまだに不思議で仕方がない。
そして更には料理も上手い、洗濯もするし掃除もする。てか、そういうのが好きらしい。ゴミだしも自らしてくれる。
痒いところをちょうどいい塩梅の力で掻いてくれる。
悪いところなんて無いに等しい。
一つあげるなら怖がりなところか。
自分の部屋におばけがいると言って私の部屋に転がり込んできてからというもの、出掛けるときには服を取りに行くから着いてきてくれと目の前の部屋にまで私をお供させる。
そこだけがちょいひっかかるところで、あとは言うことない。
趣味はどうやら登山らしいが最近はめっきり行っていないらしい。
仕事はそう、海外営業部の確かヨーロッパ担当だ。飛行機が怖いので海外出張は行かないと入社する前に言い張った強者。
よくまあそんな奴を入れたもんだ。うちの会社はどうなっているんだかよく分からない。
仕事ができるのかできないのかは、知らない。というかどうでもいいと思っている。自分の仕事をちゃんとしていれば、それでいいだろう。
よくよく考えたらかなりの好物件だ。引く手あまただろうに。
よくまあ私は全く惹かれなかったものだ。これはきっとまだ私の中にある羊君への良心のかけらのなせる業か。
とにかくだ、分析すればするほどいいところしか出てこないわけだ。
上田さんのいうとおり、狙ってる女子も多そうだから、ここはひとまず穏便に、何事もなかったようにしなければ。
一緒に生活、いや、転がりこんできたなんて口が裂けても言えない。

