帰ってきたライオン


「というわけでね、徐霊してもらおう」

「えーと……それって俺の部屋ですか?」

「うちにはおばけいないし見えない」

「……はあ。じゃやはりうちなんですね」

「う、うん」

カタカタカタカタとパソコンをタイプし、

『霊媒 東京 本物 安い』

と、検索ワードを入れてみた。

案外ない。

東京で一番当たる占い師、これが本物、お試し価格あり。騙されないための占い師選択術、これであなたも普通の日常に戻れる。霊でお困りなあなたはぜひここへ。等々。

どれも正直胡散臭い。

「そしてどれも高いね」

「ですね。だいたい60分3万円が相場みたいですね。60分もいります? さっときて塩撒いて水置いて、それでいいようなもんですよね。でもあれですね、3万あったら旨い肉屋行けますね。霜降り、特上タン塩、特上ハラミ、特上カルビ、白ころホルモン諸々」

「のど、鳴るね」

「はい。鳴りますね。てかどっちがいいですか? 霊媒と肉」
「肉」速答。

「ですよね」

検索終了だ。
たった3分で霊媒から肉に変わった。
しかもだ、

『霊だって寒いから居座っている。ほら、暖かくなれば人間もほいほいと外に出歩くように、霊もまた出ていく』という眉唾な理由をこじつけているどう好意的に見ても胡散臭いサイトの情報を『だよね』というふうに頷き、無理矢理納得させた。

もちろんその裏側には『肉』というワードがキラキラとまばゆい光を振り撒き輝いている。

で、次にグルメサイトを検索し、クーポンを使えて安く済む旨い焼き肉屋の検索を始めた。

そこそこある。
どれもこれも美味しそうな写真が載っていて、こたつに肩まで入って画面を見ている私の口元には涎が溜まっている。

肩を出してパソコンのマウスをカチカチやってる松田氏は若干震えている。
パジャマ1枚じゃ寒いに決まっている。そこで、実家の母が送ってきた半纏(はんてん)を思い出し、1枚貸してやった。

毎年送ってくる(正確には毎年手作り)ので無駄にあるのだ。去年のがあるからいらないよと言っても聞く耳を持たないうちの母。

そんな母のおせっかいがここで役に立ったよといくばくかほっとした。松田氏もほっこりしてるからまあ、よしとしよう。