帰ってきたライオン


「って、聞いてます? 美桜さん」

「お、あ、はいはい」

「お。じゃないですよ、おっさんじゃあるまいし。最近松田さんと仲良く帰ってるみたいですけど、いつからなんですか?」

!!!!!

なぜそれをこいつは。

いやはやいつからですかと前置きなくストレートに容赦なく打ち付けてくる言葉のボール。
胸でどかっと受け取ったから今息ができない。
ちょっと待って。

ややしばらく間があいて、

「なんの話ですか?」

「っっっはーーーーーあ?!」

なるよ、さすがに今のは痛い。私痛い。
上田さんは人からの又聞きで私と松田氏が一緒に帰っていることを聞き付けたらしい。
実際に彼女は見ていないという。なので、その本当のところを確かめようとしているわけだ。

どうもこうもない。ただのお隣さんだ。
と、口を開きかけたところで、

「気を付けたほうがいいですよ」と先に言われた。

「何を?」

「松田さんですよ。まあ、私のタイプじゃないけど、私はもっとこうガッチリしてるほうが好みなので、美桜さんが誰といようと関係ないんですが」

私だってあんな白もやし、ごめんですよと口を開きかけたところで先に上田さんの言葉がするりと口から流れ、自分のことばはまたも飲み込むはめになった。

「ああ見えて……隠れファン、いっぱいいるんですからね」

「へー、そうなんだ。やるね」

「呑気なこと言ってる場合じゃないですよ。こわーい女子だっているんだから、気を付けないと足元掬われますよ」

「やめてよ縁起でもない」

「今回は私が火の粉を消しときますから、その情報、詳しく教えてくださいよね。今日」

「今日?」

「そうですよ、今日。なんのためにこんな頑張って仕事してると思ってるんですか? ほんとはしたくないんですからね仕事なんてめんどくさいもの」

いや、そんな百パーセントの気持ちで言わなくても。
と、言いたかったけど、電話の呼び出し音により、またもや私の言いたいことは遮られた。