「グリーンさん悲しませるようなさ、同じこと、絶対にしないで」
「……お、おう、任せとけよ」
「その任せるっていうの、本当ですかねえ」松田氏も便乗してきた。
「それじゃぁあー、寝るよ!」
右手を高々と上げて立ち上がるとくるくるして、目が回っていて、パタンと誰かの腕の中に落ちたのと同時に、記憶も落ちた。
耳元で羊君と松田氏が話しているの声が聞こえたけれど、何を話しているのかは頭に入ってこなかった。二人で楽しそうに笑っている声が聞こえて、私も混ぜろ! と思ったところで完璧に落ちた。
______________
___________
______
で、今に至る。
熱めのシャワーを頭からかぶり汗をかいて酒を抜く。
これから成田まで羊君を送っていく。
三人で食べる朝御飯もこれが最後。
蹴っ飛ばされて起こされるのも最後。
羊君が掃除が終わるまでこたつの部屋に入れないのも、最後。
三人で買い物に行って走り回るのも、もうできない。
夜寝るときの恒例行事、どこのタイヤかの音当てクイズ、羊君の焼きもち攻撃も、もうないのか。
頭を振った。
頬をパンパンと叩き、ふっ! とひとつ大きく息を吐いた。
何も永遠にってわけじゃない。仕事が片付いたらまた戻ってくるんだから、悲しむことはない。
元気に見送ろう。
そう決めて、シャワーをきゅっと止め、髪の毛をわしゃわしゃとタオルで拭いて、服を着てバスルームを出……
視界には一心不乱に何かをかきこむ羊君の背中。
事、いぶかしげ、傾げる首、
松田氏の苦笑い、鼻に辿り着いた香り。
「羊君! 私のも残しといて! 全部食べちゃダメだよ!」
走り、中身を確認しようと体をのめりこませると、
好物のいくらの醤油漬け松田氏バージョンは既に半分がなくなりかけていた。
羊君がごはんの上にたっぷりとかけて、かっこんでいる。
私の悲鳴と羊君の食べるスピードが増した。

