帰ってきたライオン


宴は宵の口とともに朗らかに始まった。
さりとて新月。
夜空に星が綺麗に映えるときだ。
そんなこともあって、大屋さんの許可を得て中庭のようなところで3人だけのいってらっしゃいパーティーが幕を開けた。

さよならじゃなく、いってらっしゃいにしたのは、いつでも帰ってこられるようにとの松田氏の提案だ。

そんな松田氏お手製の料理はいつも以上に力が入っていた。

海老とアボカドのマヨネーズ和え、カルパチョ、ぱりぱりサラダ、パンプキンスープ、白身魚の香草焼き、フィレステーキ、エビフライ、唐揚げ、ブルーチーズ、マッシュポテト……

食べ合わせなんて気にしちゃいない。
ようは羊君の好物のオンパレだ。

そこにシャンパンとワインで時間は緩やかに流れた。


「オーストラリアには野良カンガルーがいるんだよ」

「なにそれ」

「いやいや、そう思うでしょ? 思うよな! でも野良コアラもいるんだよ」

「野良ってそんな言い方」野生にいるんだからそのままコアラでいいだろうに。

「高速走らせてるとさ、たまに路肩に座ってたりしてて、けっこう面白い」


といった至って普通の話をたらたらと話して、
スーパーで食べたあれは旨かったの、何であのとき俺と美桜が必死になって買ってくれって言ったテント一式を却下したんだ、あれがあればほら、今ここにテントがあってプチキャンプっぽかったのに。とか、

三人共通の話題で大いに盛り上がった。

くいついとお酒も進み、しゃりぱりと食事も進み、気づけば知らぬまにシャンパンボトルは3本も空いていた。


「羊君!」

「あ? 声でけーよタコ」

「バカ!」

「ちっ」

「だけど、そんな羊君だからこそあれだ」

「こいつ酔ってんな」

「ってない! まだ大丈夫さ。ってさ、一言告白しまーす。実はね、ちょー辛いときあったし悲しくて泣いたりしたことあったんだよ!」

「……いきなり始まったな」

「で、も、だ、それなりに充実感あった! おかげで仕事もはかどったし」

「ばかなの?」

「……ありがとうね」

「なにが」

「ちょっとでも好きになってくれて、ありがとう!」

「……っち」

「でもごめん。
私、松田氏がうちに来てからもうずっと松田氏が好きなの。
今だかつてないくらい好きな気持ちになってる。悪いが羊君の時にはこんな気持ちなかった。吹っ切れられなかったのは決定的な何かがなかったからなんだなー。でもー、あった。ホテルでグリーンと会ったとき、グリーンを見た時にね、あ、羊君と繋がってる人ってこの人だって直感で思った。だから……」