帰ってきたライオン


それまで普通に生活を送っていた。
いつもと変わらぬ日常だった。
しかし、

『あ、俺明日帰るから』

やだ、玉ねぎ買うの忘れちゃった、ちょっとそこまで……

といわんばかりの勢いでさくっと放った言葉に、私と松田氏は面食らってしばらく時間が止まった。

最後の最後まで適当な奴だ。
でも、言い終わった羊君の横顔にはすこーしだけ悲しみが混じっていて、ああ、羊君もここの生活が好きなんだなって感じた。離れたくないって思ってるんだって、そう感じた。

そうだ、私の感は必ず当たる。

くすっと口角が上がって、そっぽを向いている羊君の背中にそっと手を置いた。

「じゃさ、いってらっしゃいパーティーしよ」

「そうですね。そうしましょう。それにしても羊さんは唐突なんですよいつも。明日帰るとかってそれあり得ないですよ。もっと前に会社から言われてたでしょうに」

「うるせーな、昨日聞いたんだよ」

「はいはい分かりました。じゃ、買い出しってことで」

「二人で行ってきて。俺片付けてるから」

「っと最後までさー、わがまま!」

本当は知っていた。
上田さんからの情報はもっと早く入っていた。

『美桜さんの元どうしようもないカンガルー彼氏、オーストラリア帰るんですってね』

そんな話を聞いた瞬間、私は即効松田氏にLINEを送った。
松田氏は会社のあらゆるところに通じていて、真相なんかあっというまに仕入れてきた。

彼がどんな仕事をしていて、どんな人と関わりがあるのかは定かじゃないけど、どうやら羊君とは違った意味でアヤシイともいえる。

けど、取り立て聞くことでもない。

というわけで私と松田氏は買い出しに、羊君はなんやら用事を済ますからと言って家に残ることになった。