さて……
あれからけっこうな日が過ぎたわけだが……
「ほら、さっさと起きろよタコ」
「だからさー、痛いんだってば!」
「いつまでも寝てるからだろうが! さっさと起きろ。今日がなんの日だか分かってんだろうな」
「分かってるし! 言われなくても起きるよもう!」
どんどんと足を鳴らしてバスルームに向かう。
「松田氏おはよう」
「おはようございます。シャワーから出たら丁度朝御飯できてますよ」
「ん」
松田氏はいつものように料理をしていて、新しいメニューを考案したのでぜひともとはりきっている。
羊君は私の布団を片付けたとたん、必殺コロコロの炸裂。
コロコロコロコロ、びっ。
コロコロコロコロ、びっ。
と軽快に紙を切る音とコロコロを交換する音。
その後はぱたぱたとはたきが始まり、テレビにたまる埃や隅の埃もめざとく見つけてはハンドクリーナーで吸い込んでいる。
その度に『ひゃっひゃっひゃっ、吸い込んでやったぜ』と奇妙な声をあげていた。
松田氏は松田氏で、「今料理中なんですからあまり派手に埃を舞わさないでくださいね!」と埃を気にしていて、羊君は羊君で、「知るかそんなもん、早く作れよ」と悪態をついている。
私はそんな二人のやりとりをクスクス笑いながら聞いている。
でも、この関係もあと数時間で終わってしまう。
日曜日の朝9時。
まだまだ暑い夏が続きまくっている頃。
セミの声も今が盛りと激しさを増し、布団の無いこたつテーブルにもすっかり慣れた頃、
羊君はオーストラリアへ帰ることになった。

