帰ってきたライオン


「うるっさい!」

と気持ちいい音を立てて腿を叩かれた羊君は、「すいません」と小さく謝り静かになった。

思わず、松田氏と目を合わせて『まじ?』とお互いに思い合うほどにびっくりした。

「だから、タイガー、ひとつ聞いてもいい?」

「はあ」

「私から連絡こなくてどう思った?」

「あ? 別に……」「どう思ったの?」言葉をかぶせた。

「……焦った。てかイライラした」

「探したって言ってたけど、見つからなくてどうだった?」

「……不安だった」

「なんで?」

「なんでってお前、なんだよ」

「聞いてるの私だから。なんでそう思ったわけ」

なんて言ってほしいのか、よーく分かる。
グリーンが望んでいること、すっごいよくわかる。私だってそうだったから。
だから、羊君……

これで、たぶんもう最後になると思う。

私の勘はよく当たる。

こういう気持ちの勘は必ず当たる。

「そんなん……」

羊君もきっと分かってる。
終止符を打つか打たないか、グリーンも大きく畳みかけてきた。

じっと羊君の目を睨んでるけど、握った拳は力が入ってる。
彼女もまた怖いんだ。

つられて私も体が強ばる。

今までの月日がどどっと頭に流れてきた。

楽しかったこと、辛かったこと、怒ったこと、泣いたこと、笑ったこと、ドキドキしたこと、幸せに思ったこと、不安になったこと、そして、


気持ちが動いたこと。



ほんの脆い糸状でつながっていたもの。

私の中にある羊君への気持ちがするりと抜け落ちたこと。