帰ってきたライオン


涙と共に過去の感情も流れ去り、

明けた空同じく天からも心の中からも新しい日差しが細い光の線となってまっすぐに降り注いだ。


もう、ぶれない。


「おい、さっさと起きろよタコ」

背中を蹴られたら痛さで頭がぶれて、息もつまる。

くっそやられた。いつも通りの羊君の起こし方だ。
でも何か違う。
なんか、においが違う。

飛び起きて布団を上げて台所へ走る。

「羊君、なにしてるの?」

台所でフライパンに向かい合って難しそうな顔をしている。
私に気がつくと、

「早く顔洗って。メシできた。そろそろできる。でたる。できる」

ああ、料理ができるとできたと言うことがぐっちゃぐちゃになってるんだろうな。

羊君が台所に立つなんてそんなの見たことない。
今までそんなことしたことなかったのに、と、考えながらも顔洗って歯を磨き、髪の毛にブラシを通した。

ちょっと焦げたトーストに同じく焦げた目玉焼きにハムにサラダ。

松田氏が作る朝御飯は、ザ・和食なんだけど、羊君のは違ってた。というか、材料がそれしかなかったってのもその理由だけど。

「食え」

「……食えって、私は犬かなんかか」

「同じようなもんだろ」

「羊君!」

「はいはい」

照れ笑いかもしれない。
だからそこでやめて、トーストにジャムを塗った。

変な感じ。

昨日の夜感じた気持ち、今朝今感じている気持ちとではぜんぜん違う。

ラインがびしっと引かれ、区切りがついたというか、すっきりしている。
そんな感じだ。

この朝食だってきっと羊君の精一杯だ。

もうきっと、二度とこの朝食を食べることはないと思う。

だから、ゆっくりと噛みしめた。

作ってくれた朝御飯もこの時間も。

私だけじゃない、羊君もそう思ってるって空気で分かる。二人とも、この時間をとても大切にしてる。

忘れないように、どこにパンが置いてあってどこにサラダがあるか。何から食べて何を話した、どんなにおいでどんな味だったか。

頭に焼き付けるようにじっくりゆっくり噛み締めた。