帰ってきたライオン


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その頃松田氏とグリーンは、

「短期間で覚えるのは無理ですので、ここはひとつ必要な言いまわしだけ覚えましょう」

「ちゃんと言葉の仕組みが分からなかったらタイガーにしっかり言えないじゃない」

「ぷっ」

「ねえ、だからさ、もういい加減笑うのやめてよ。わたしにとってはタイガーはタイガーなんだけど」

「失礼失礼、私たちの間では羊さんは羊さんな訳でしてね、何回聞いても笑ってしまいます。わはははは」

「……シープってことなんでしょ?」
「はい」

「この際シープでもいいんだけど、きっとそれはタイガーが許さないでしょって、そんなこと言ってる間に美桜とタイガーがどうにかなったらどんすんの! あなたのせいだからね、責任とってもらうよ」

「何言ってんですか。あなたが俺をここに監禁しているのに。俺は一刻も早く帰りたいんですよ。やはりあの羊さんと二人きりにするのは怖いです。何されるかわかったもんじゃない」

「私がこうやって連絡を無視している間は大丈夫よ。あれは自己中の塊なんだから、無視されるのが一番嫌いだもの」
「読んでますねぇ。手の平なわけですね」

「美桜と早く二人きりになりたいなら協力して」

「はいはい」

タイガーと美桜がどうこうなるってことは無いから大丈夫大丈夫、それはぜったい無いからとグリーンは言い、滞在するホテルで日本語のテキストを開いていた。

プラチナブロンドの緩いウェーブヘアーは白人の代名詞。ブルーアイズの典型的な外国人代表は手足が長く、出るとこは出て、締まるところは締まっている。

頬にあるそばかすがチャーミングであっけらかんとした性格。相手のことなどお構い無しにずかずか入ってくるけれど、裏のない単純なタイプだ。


タイガーは美桜のところにいるのか?

から始まり、三人の奇妙な共同生活をしているというメールを貰ったが、それは一体どういう関係なのかを根掘り葉掘り松田氏に質問の嵐を浴びせた。

松田氏は松田氏で聞かれたことに関しては逐一詳しく返していたそうだ。

そこで、はっきりさせるべくグリーンは単身日本へ旅行がてら羊君に会いに来たというわけで。

しかも、羊君には日本へ来ることは一切言っていないときた。