帰ってきたライオン


ひとつめの角を曲がったらそこには見覚えのあるコーヒーショップが小さく見えてきた。

ランチ時ってこともあってか人が多い。かきわけるように走り店の中へ入る。コーヒーを買い求める人の列に羊君はいない。

店内には人がたくさんいて探すのも一苦労なんだけど、裏手の出口付近の人が少ない一角に羊君らしきシルエットの後ろ姿が目に入り、「すいません」と言いつつ人混みを押し退ける。


「羊君!」

「お、やっと来た」

「いきなり電話ってびっくりしたよ」

「俺的には出たのにびっくりしたけどな」

「私が出なかったらどうするつもりだったの!」

「デスクにかけようかと」

「……で、何してんの?」

「ランチ」

「ラ…………」

悠長にランチなんて。
ホットサンドをパクついている羊君はサラダも食べたようで、アイスコーヒーを啜りながら「お前も食べれば?」と言ってきた。

そんなもん食べてられっか!

と言いたいところだが、お腹か空いては戦はできぬ。

「ちょっと買ってくる」

「俺にももうひとつホットサンドよろしく、はいこれ」

手渡されたお金、お前の分もこれで買ってこいと上から目線で言い放つと、早く行けとばかりに手をひらひらさせた。

複雑な思いだけど買ってくれるのはありがたいから素直に受け取り、人の一番少ない列に並んだ。

ホットサンド3つとキャラメルマキアートで貰ったお金はなくなった。

もちろんひとつは羊君に、あとの2つのホットサンドは私が頂く。
一番大きいサイズのキャラメルマキアートも頼んでほくほく顔で席に戻った。