帰ってきたライオン


上田さんの情報網は朝イチから入っている。
彼女の交遊範囲は広い。もちろん交友範囲も広い。

口は悪いから心臓に悪いけどしかし、

歩く新聞だ。さながら歩くワッツニュー(what's new)

上田さんの気遣いに本当に嬉しくて、もう彼女に足を向けては寝られない。

神様仏様上田様だ。

「そのかわり」

「かわり?」

「来週金曜日と月曜日休みくださいね」

「それは別にあれだけ……」待て。

なんと、来週金曜日に休みを取ったら火曜日は会社の創設記念日で休みだから、

「五連休?」

「イェスイェス」

「どこ行くの?」

「旅行です」

「えー!!!」

「相手は帰ってきてから教えますから。今後どうなるかの見極め旅行ともいうので」

誰だか分からないけど誰かを見つけ出したのは間違いない。相手は相手で気になるけどここはこの条件で手を打とう。

私にとってはこの問題がキーとなっていて、
上田さんは来週末からの旅行がキーだ。

お互い目を見合って頷いて、それ以降ぴしっと話すことなくパソコンに向かい合った。

私たちの気迫を感じてかだーれも話しかけてこないし神谷さんさえも遠巻きに見守り、彼女の上の上司とあれはどうなってるんだと様子を伺っているのを片隅に、

でもごめんなさい、視界の端に入っていますがそっちに気を向けるわけにはいきません。

ここははひとつ上田さんを見習う。

上田さんの場合、いかに上司とて自分が今忙しくて離せない仕事の時は『今忙しいんで後にしてください』と言ってしまう。

今の若者はすごいなと思いつつも私もたった今それを実行している。

そうなんだよね、仕事さえ片付けば会社だって文句は言うまい。