帰ってきたライオン


「とにかく!」松田氏が音を立てて湯呑みをこたつテーブルの上に起き、

「グリーンさんは今日本に来ていて、明日も俺はお会いするということです」

「「ハ?」」なにごと?

「松田氏? 何言ってんの? どういうことそれ」

「そのままの意味です。さ、もう寝ましょう。布団敷きますからそこ、どいてください二人とも」

「待って松田氏、もう一回聞くけどそれどういうこと? なんで松田氏がグリーンと会う必要があるわけ? 会って何するの? てかそもそもなんでいつのまにか二人で連絡取ったりしてんの?」

「成田さんに来たメールを翻訳していたでしょう? それでですよ。成田さんと私の書いた文章のちがいに気づき、コンタクトしていらっしゃったんです」

「なんの話で?」

「それは……」

こたつテーブルを有無も言わさず台所に持っていき、布団を敷くからどいてくたさいと再度羊君に言い、ついでに早くパンツもはいてくださいと言ってから、

「それは秘密です」と言った。

「おい、今グリーンにLINEしたけどなんも連絡ねーけど。それにメールにも返信もない。オーストラリアの家に電話しても出ねーぞ。どうなってんだよ」

「さあ、それは私には分かりません」

「あいつどこにいんだよ、場所教えろ。今日だってコーヒーショップで仲良く茶ーしてただろ」

「……お二人、つけていたんですか? いや参りましたね、気づきませんでした。それに茶じゃなくてコーヒーを買ってすぐに帰りました」

「どこに」

「私はここに。グリーンさんはどこか滞在しているところに。場所は聞いていません。はい、邪魔です」

「何やってんだよおまえらは」

言いながらも体は動き、布団を3組敷き終わっていた。

羊君は話しながらパジャマに着替え、私はどうしたらいいのか分からなくなって、とりあえず髪の毛に櫛を通す。

松田氏は寝る前の日課のストレッチをしながら首を伸ばしていた。

「秘密なので二人には言えません。だってそうでしょ、お二人は私に何も言わずに食事にでかけ、私はひとり。同じ煙のにおいを体に巻き付けて帰ってきたのに知らぬ顔をされたら悲しくもなります。あー、悲しかったです。とっても悲しかったなー。
はい、おやすみなさい。電気消しますよ」

既に布団の中に収まっていた松田氏は電気のリモコンを片手に「ほら、消しますよ」と再度言い、なんだか後ろめたく感じている私たちは言葉につまり、言われる通り布団に入る。

言いたいこと、聞きたいことはたくさんあるが、とりあえずここに松田氏がいるってことはグリーンも一人でホテルにいる。

「……松田氏、楽しそうだったね」

ポロっと出た言葉。ほとんど無意識だった。

「なんでそうなるんですか」

起き上がって目を合わせてくるけど、見れずに!

「笑ってた」

「初めて会う人と会っていて笑顔がなかったら相手は不安になるでしょう? それだけです」