帰ってきたライオン


駅伝の選手さながら最後はラストスパートになっていた。
きれいなフォームとは言いがたいが、息を切らしながら走っていた。

しぬ。

そろそろやばいと思った頃にはようやく懐かしい古ぼけたアパートの前、自宅前にたどり着いていた。

膝に手をつきぜーはーぜーはーやって、ごくりと唾を飲んで顔を上げた。

いつも通り、部屋には明かりがともっている。

ということは家には松田氏がいるってことだ。
二人顔を見合わせひとつ首を縦に落とし、

輝いていないくすんだシルバーののぶを回した。



「あ、お帰りなさい。随分遅かったですね、
あれ、二人そろってお帰りなんて、もしかして二人で出掛けてたとか?」

「……いやいや」という羊君に、

「そうそう……そ、そ、そう?」最後は疑問になってしまった。

「……ま、いいです。食事してきたんですよね? お茶でも飲みますか?」

「…………飲む」

なんなんだこの普通なポーカーフェイス。

もしや、完全に自分の中でプランが出来上がっていてさっきグリーンとは既に話がまとまっていて、

二人でかけおちならぬ、私を、そして羊君を置いて出ていく気満々なんじゃ。

そういえば松田氏って表情を顔に出さないし、クール気取ってる感じがあるし、静かな顔して実は暗黒ブラックホールよろしくどぎつい渦が心の奥底に眠ってるとか? ぐるぐる回ってるとか?

ぐるぐるぐるぐる…………

あるな。きっとありえる。相当ありえる。だいたいありえる。

んで、自分で答え出しちゃってもう先を考えていて、ここはそのXデイが来るまで居すわる仮の住まいとか?

とか?

とかさー……

とかさー。

とかだよねー。

あるよねきっと。