「出てくるまで待とうよ!」
「もちろん」
出てきたところをとっ捕まえて説いてだしてやる!
なんで知ってるの?
どうして知ってるの?
「言いたいこと、たくさんある!」
「明後日な方向だけはやめろよ」
「何回も言わなくても大丈夫です」
「だってお前は、」
「松田氏にかぎって、そんなことするはずない! 絶対に無いから」
「……そ、そうか」
二人が入って行ったコーヒーショップの中を穴が開くように凝視していた私の後ろで、羊君が悲しそうな、でもホッとしたような顔をしていることになんか気づきもしなかった。
いつもだったら空気の流れでなんとなく雰囲気や空気なんかを感じられるんだけど、そこに気持ちが集中できなかった。
30分が過ぎ、更に30分か過ぎても二人は出てこなかった。
ところで、羊君か気づく。
もしかして反対側にも入り口あるんじゃ?
まさかの予感は的中で、反対側に入り口があった。
ざっと店内を見渡したけれど、どこにも二人の姿はなかった。
やられた。
逃げられた。
否、逃げられたわけじゃない。つめが甘かったわけだ。
「お前、あいつからLINE入ってる?」
「ない。羊君は」
「なし」
咄嗟に確認した電話に連絡は無し。
時間は22時を過ぎている。
お互い顔を見合わせて唾をのんだ。
変な方向に考えがふらつくのをぐぐっと飲み込みお互いそこのところは口にしない。
無言のままだけど、足だけは早足になりながら自宅へと向かっていた。

