「美鈴!」


自分を呼ぶ、聞き慣れた声。


「美鈴っ!」


強く、体を揺さぶられて、私はゆっくり目を開けた。

そこには、見慣れた母の顔。

心配げに歪められた母の顔にゆっくりと視線を這わせると、私は掠れる声を絞り出した。


「……お母さん?」

「お母さんじゃないわよ! 何やってるの! お風呂で溺れかけるなんてっ!」


心配のあまり逆切れして怒る母に、ぎゅっと抱きしめられる。


フワリとした温もりを感じて、私は自分が生きていることを実感した。


頬を、温かいもの伝い落ちる。