吸血鬼の世界に名が知れわたるのは偉大な者や、凶悪な者、変人奇人と称されるもの、強者や一族の長など様々。

そしてまた、周りから不死王ウィザードと呼ばれる青年も吸血鬼界においては、有名だった。

とある屋敷の数ある部屋の中の一室では、椅子に座る二人の青年がいた。

片方は悠々自適に品よく長い足を組み紅茶を飲み、もう片方は眉間にシワを寄せ顔をしかめていた。

「ウィー、お前に弟子が出来たのは本当か?俺の血族がお前に弟子が出来たと噂していたが?」

顔をしかめる、とある吸血鬼一族の始祖であり、始祖として覚醒したウィザードの先輩兼友人であるバリシャは、後輩が実は見た目に反して落ち着きの無い愉快犯であり、非常にふざけた性格の持ち主の為、弟子になったと噂の吸血鬼を心配し事の確認に来たのだった。

只の噂なら良い。
もしも、事実だった場合は、周りが荒れるだろう。

主に、弟子になった吸血鬼を心配して。

「本当だよ。つい先日」

久しぶりに女の子の姿に変身して夜の街の中を歩いてたら、お腹空いてね。人気の無い路地裏に入ったら若い酔っぱらいがワーワー騒いでたんだよ。暗示で眠らせて血を飲んでたらいきなり起きて、恋人に貢がされて浮気されこっぴどく振られたから死んでやるだの殺してくれだの煩いの難の。しまいには吸血鬼にしてくれと言うんだよ。最初は吸血鬼にするつもりが無くて断ったんだけど。

そしたらさ、他の吸血鬼に襲われてね。そのままだと色々ヤバかったから吸血鬼にしたんだよ。

と言う。なってしまった者は仕方ないが、他の吸血鬼ならまだしも寄りによってこの人外の塊の弟子になってしまうとは。

ああ、これから大変だろうなと思ってしまう。主に弟子が。