「俺の親友兼秘書の狩那緋」

「そうでしたか!ささ、こちらです!」

窓際で人も少ない席に案内された。

夜景が良く見えて、いい席だ。

「メニューは何に致しましょうか?」

「いつもの二つ」

「かしこまりました!」

いつものやつで伝わる光景なんて初めて見た。

映画とかドラマだけだと思ってた。

意外と伝わるもんなんだなー。

「そんで?」

「え?」

「だから、虹恋ちゃんのことだよ。どうすんだ?」

「……今はどうこうしようなんて考えてないよ。俺はまだ、にぃを迎えに行く資格がないんだ。仕事決まって、信用されるようになってから迎えに行く」

「そうか。まぁ、あまり時間をかけるなよ?ただでさえ虹恋ちゃんモテるんだからな」

「わかってる」

にぃ、待ってて。

必ずにぃを迎えに行く。

この手でもう一度抱き締めてみせる。





俺はこの時、自分のことばっかりで。

にぃが何を考え、何に悩んで、あんな大きな決断をしたのか。

そんなこと、微塵も考えてなかった。

――――――こうしてる間にも、にぃは辛い決断を下していたのに。