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その日から、地下室は使用禁止になり、すぐに地下室取り壊しの作業が始まった。


教室で授業を聞きながら、りえはぼんやりと作業の音に耳を傾ける。


校長と戸田の事は秘密になったままだが、それでもなんとなく二人の態度が変わったことと、急に地下室がなくなることに疑問を覚えている生徒はいた。



「うるさいなぁ」


担任の川村が、教卓に立ちながら工事の音に顔をしかめる。


りえは、ソラと目を見交わし、軽く微笑む。


地下室がなくなれば、本当に母親と妹とは会えなくなる。


なんとなく、そんな気がして、少し寂しい感じもする。


けれど、不意にりえとソラはハッと顔を上げた。


「今……」


りえが呟く。


「うん、聞こえた」


ソラも、頷く。


「バイバイ」


そんな、未来の声が、確かに、工事の音と一緒に聞こえてきたのだ。


「バイバイ」


りえは涙をこらえながら、一言返事をしたのだった……。


END