病院についた時は、すでに夜明けだった。


小鳥のさえずりさえ、気分を晴らさない、そんな中、患者専用の出入り口からそっと病院の中へ入っていった。


院内は静まり返っていて、足音一つしない。


自分の足音を気にしながらも、りえは早足に病室へと向かう。


個室なので、ノックをせずにそのまま入る。


すると、変わらぬままの父の姿がベッドにあった。


様々なチューブがつけられていて、ずっと眠ったままの父親の横に、りえは腰を下ろす。


「お父さん」


ゆっくりと、勇気へ話しかけた。


「お母さんが、何かを私に言いたがってるの。


それが、なんなのか私には理解できなくて……。


あの思い出の砂浜にも行ったわ。


けど、何を言いたいのかはお父さんの思い出の中にあると思うの……」