≪消えた町の人々!≫


大きくそう書かれている新聞の見出しを、田村勇気はトーストをかじりながら眺めていた。


「早くしないとまた遅刻するよ? いってきまぁす!」


元気よくそう言い、パタパタと玄関を出て行くのは勇気の娘、今では母親代わりになっている田村りえ。


「あぁ」


新聞に目を落としたまま、生返事を返す。


勇気の妻、伸江が死んで約3年が経つ。


最初は毎日泣いていたりえもすっかり自分が母親代わりだということを自覚していて、まだ中学生だというのに家のことは何でもこなしていた。


勇気はようやく新聞から目を離し、チラッと時計を確認する。


「遅刻するじゃないか!」


思わずそう言い、慌てて鞄を抱えて外へ出る。


慌しい朝のひと時を、テーブルに置かれた伸江の写真が柔らかく微笑み、見つめていた。