波の音が聞こえる。


外はもう真夜中だというのに帰る家を見失い、徘徊する人々。


大人から子供まで老若男女問わず、海岸を歩き回る。


自分の家がどこにもなくて、ただ歩く。


足にはボロボロになった靴、ボサボサの頭。


海岸から少し行くと、そこにはその人たちの家がズラリと建ち並んでいた。


立派なマンションから木造の一戸建てまで並ぶその中で、光を灯している家は見当たらない。


その家を一軒一軒見ていくと、玄関の扉がすべて赤いことに気づく。



昔ながらの引き戸の玄関でさえ、真っ赤な色をしていて、その光景は異様なものだった……。