長い髪を緩く束ねた美貌の主は、支度半ばの茶器を片手に眉を下げ、なんとも情けない困り顔。 それだけを見るに、如何にしても伝説にも近しき名を戴く存在と、信じるは難しい。 少女とても、疑いは胸に燻る。 だが、縋る心地で路なき路を歩き、泥に転び、やっとの事で此処まで至ったのだ。 何も成さずにおめおめ引き下がる気は――