此音忌譚 ―コノオトキタン―




 言葉と真逆の声音に、主は頬を膨らませた。



「別に、私はお客人を騙しているわけじゃあ、在りませんよ、珊瑚(サンゴ)。

 ただ、彼女達は未来を見たくはない。

 今思えば幸福であったと錯覚できる過去に、逃げ込み浸り込みたい。

 人間は逞しく未来に進む生き物。

 それに逆らう人非ず人であれば、私の胃に納まるのが『幸』と云うものでしょう」