聴こえるものは、何もない。


 ――否、静寂ゆえに響く、静寂の音。



 否――己の裡で響く、己の音。



 己の心の臓が熱ばかり帯びる紅い水を送り出し、迎える音色。

 闇に、紅い音がひどく映える。

 戯れに、ひとつ、ふたつと、数えてみる。