この入れ知恵は、目まぐるしく過ぎた先週の学校生活から一晩経った土曜日の夜、和真先輩からの電話によってもたらされたものだった。


《もしもーし?起きてたかい弟よ》


「……その一言だけでツッコミ所満載なんですけど、とりあえず、何故赤嶺先輩の携帯からわざわざ満島先輩が電話をしてくるのですか」


本当は夜20時に寝るわけないでしょう、とか、貴方の弟になった覚えはありません、とか、言いたいことはまだまだあったのだけれど、とりあえずそれは置いておいた。


言ったところでこの人にはへらへらスルーされるだろうと思ったからだ。


《今日は和真んちで晩飯ご馳走になってんの。それに、和真の携帯かけ放題のプランだしー》


《荘司!何人のもので勝手に電話してる!》


満島先輩が予想通りにへらへらしているのを聞いていると、奥からドアが開き赤嶺先輩の声が飛ぶのが更に聞こえる。


その声はクリアだったから、満島先輩はスピーカーにして話をしているのだろうとなんとなく推測出来た。