「もう離さない!」


「離さないで下さい」


週明け、教室に到着すると応援団一年生による寸劇が執り行われていた。


予想は出来ていたけど……こうやって男同士でそれを再現しているクラスメイトにげんなりしてしまう。


「お、ご本人登場!ささ、ヒーローの位置で実演してよ紫倉君」


「結構です。というか、男相手にするわけないでしょう」


クラスメイトのあまりにも馬鹿なその一声に、僕はすっぱりと斬るように答えた。


今までだったらおどおど困ってみせていた僕からまさかこのような返しを受けるとは思ってもみなかったようで、クラスメイト達はぽかんと口を開いて黙っている。


「それにあまりそういう事をしていてバレたら大変なんじゃないの?和真先輩と、荘司先輩に怒られると思う」


そして追い討ちの一言に、クラスメイトの、特に応援団の連中が大声を上げた。


「あ……あの赤嶺団長と満島副団長を名前で呼んでる!」


「エルザパイセン!なんか、すみませんでしたぁ!」


縦社会というものは本当に凄い。これは、あの二人からの入れ知恵なのだが、こんなにも効き目があるだなんて思いもしなかった。