「……そう、聞いたのね。ヴァンパイア一族の呪いの事」
僕の憩いは、やはり同士と話すこと。放課後、数少ない頼りにしている存在のありさ先生に父から聞いた話を相談に行った。
「その話をお父様から聞いたという事は、紫倉君は恋をしたの?」
ありさ先生の質問にも、やはり浮かぶのは赤嶺先輩の顔。浮かんだ今朝の涙を浮かべながら叫ぶ悲しい表情の彼女を振り払うように首を横に振るう。
「いえ、それはありません。成長期だから特殊な体調になっているのだろうと両親には言われました」
「そう……。今はそうかもしれないけど、いずれ紫倉君にも初恋は訪れる事だし、覚悟は決めておかなきゃいけないわ」
嫌な呪文を唱えるように僕に語りかけたありさ先生は、僕の書いた歪な曲に緩やかに音符を加えて修正して行く。
「僕は恋なんてしませんよ。そんなもの無くても何の支障もなく生きて行くことは出来ます」
「あら、恋はするものじゃないのよ。いつの間にか掛かるもの。病と一緒」
僕はここ数日この呪いの事で悩みっぱなしだというのに、ありさ先生はのほほんとして、女性らしい甘やかな微笑みを僕に向けた。


