「こら!お前達!ボサボサしてないでさっさと部活に行け!今日はブラスバンドと合わせだろうが!」


引退して尚影響力の強い赤嶺先輩が現れ、とりとめ高くもない、しかしハリのある声が一声かけられると、その好機の目線達は散り散り弾け、部室から人がいなくなって行く。 


「おー和真、遅かったな」


「遅かったな、じゃない!お前はどうしてこう、エルザへ心遣いが出来ないんだ!この馬鹿者!」


手に持っていたクリアファイルを丸めぱしんと満島先輩の頭を叩いた赤嶺先輩の攻撃は、さほど強靭なものには見えなかったがそれでも心強い。


彼女には彼より、少しは僕の持つ当たり前の心があるのかもしれない。


「さぁ、人はいなくなったことだし、弾けるのなら早速弾け、エルザ。楽譜初見で弾けるだろう?……あ、それと、私も和真と呼んでくれて構わないんだぞ?」


……否、やはりピラミッドの最上層の人間に、僕の当たり前は通用しないのだ。


この二人は、正反対のようで根は同じ。強引で、デリカシー等欠片も無く、人の心の中にするりと入り込む。しかし、それを邪険には出来ない、そんな根っこの部分。