大きな社会だろうが、小さな社会だろうが、ピラミッドの最上層の住人に、逆らうこと等出来るわけがない。


「……分かりましたよ。その代わり、極力目立ったことはさせないで下さいよ」


嫌だ、鬱だと思っているのに、口から出たのは屈服の証。


赤嶺先輩はまだ涙を流したまま、だけど表情をパァと明るくし、こちらへ向かって全力ダッシュ。そのまま、何故か僕の元へダイブしてきた。


「なっ……何故!飛び付くのですか!?」


「気にするな!宜しく頼む!……エルザ」


『エルザ君』から、ごく自然なことのように『エルザ』に変わったことが、僕に飛び付いて強く抱き付く彼女の温度のように、温かい。


彼女のもたらすこの胸のざわざわは、求めていないのに……どうしてか、温かいのだ。