【完】ヴァンパイア、かなし

「ごめんなエルザ君、それで、君に頼みたいことなんだけど」


満島先輩を一瞥しこちらを向いた赤嶺先輩は、本題を切り出し始める。


「この学校の文化祭には、恒例のイベントで毎年、学校を引っ張った者として生徒会に指名された者が行うものがある。君は知っているか?」


「いえ、知りません」


おそらく、その指名を受けたのが赤嶺先輩であるということは推測出来るが、そのイベントの内容は僕は知らない。


僕の返事を確認した赤嶺先輩は、『そうか』と小さく相槌を打って話を進める。


「君も予想は出来ていると思うが、今年は私とこいつが指名されたんだ。その内容というのが、プロデュース企画なのだが……」


「和真の説明長いんだよ!なぁ?エルザ。早い話が、俺とこいつは学校の生徒の中からダイアモンドの原石を見つけてプロデュースして、輝かしてステージに立たせるってそういうやつ!」


丁寧に話を進めていた赤嶺先輩に痺れを切らした満島先輩は、ざっくりと説明して僕にニンマリと笑顔を向ける。


ここまで説明されてしまえば、先輩方の『お願い』は分かってしまうもの。


「その、だな。つまり、私達はそのプロデュースの対象として君を……」


「お断りします」


赤嶺先輩が僕にそれを頼む前に、僕は言葉を遮ってそれを断る返事を入れる。


自ら、人の視線を浴びることを何故僕がしなければならない。僕は、静かに、空気のように過ごしたいだけなのに。