そして、ゴツゴツと骨張った、僕の細くて白い手とは違う男らしい手で、染めてごわついた前髪を掻き分けて眉間に触れてきた。


「……っ!何、ですか?」


「いや、笑わないけど嫌面は出来るんだって思って。見えなくても分かったよ、ここに皺、寄せたろ?」


明るくフランクに取り繕ってるのは外見だけ。この満島荘司という先輩は、実は聡明で、人を見透かすような男なのかもしれない。


「……別に、何とも。それより、お話の続きを」


満島先輩のその僕の全ては見えてると言わんばかりの余裕な表情に、一歩後退して言葉を紡げば、赤嶺先輩が、頭の高い位置で結った艶やかな黒髪を揺らして満島先輩の額を叩いた。


「止めろ荘司。頼み事をする身分で嫌われるようなことしてどうする」


「えー、んなことしたつもり無いけど」


どこまでも真っ直ぐな赤嶺先輩と、腹の底が見えない満島先輩は、内面的にも正反対だが、やはり絶妙なバランスを保つ天秤に乗っているような関係だ、とその様子を見て思ってしまった。