彼女等に拉致されるように教室から引っ張り出された僕は、もう登校する生徒もおらずガラリと静まり返った階段の踊り場で、ようやく解放された。


「手荒な真似をしてすまなかったな。紫倉・ブルーム・エルザ君。私は三年の……」


「赤嶺和真先輩、ですよね。そちらは満島荘司先輩。この学校で貴方達を知らない人間は相当自分の事しか見てない奴ですよ」


赤嶺先輩の言葉を遮って返答すれば、凛とした佇まいの彼女は、印象が変わるくらいにへにゃり、と女性らしい柔らかな微笑みを携える。


「なー、お前名前長いから勝手にエルザって呼んでるけどよ、正しくはブルーム君?」


「……エルザで結構です。ブルームはセカンドネームです。気になさらないで下さい」


どちらかと言えばかっちりとした赤嶺先輩と比べ、フランクと表現すべきなのか、満島先輩はいちいち絡みが軽い。


この正反対さが、二人の絶妙なバランスを保っている所以なのだろうか。どちらにせよ、僕には関係の無いことなのだけれど。