【完】ヴァンパイア、かなし

「彼の名を呼びたい。彼の寂しそうな背中を抱き締めたいのに、私は、無力だ」


本当に無力なのは和真じゃない。俺だ。


何年もプログラミングの勉強をしているのに、俺は大切な人を救う力が未だに持てない。


無力で無能な俺を、エルザはどう思うのだろう。大切な人を守りきったエルザは、俺を嘲笑うかな。


……いや、エルザはそんな事はしない。馬鹿みたいに優しくて、柔らかで、繊細なエルザはきっと、悲しむ俺達に心を痛めるだろう。


「どうしても思い出せないのに、喉に詰まるその時に、どうしようもなく愛おしくて、切なくなる。……ああ、かなしい」


和真の言う『かなしい』は『悲しい』ではなくて『愛しい』なのだろう。


かつて和真が恋をしたあいつが教えてくれた、その言葉。


愛おしくて堪らないのに、可愛くてしょうがないのに、大切で仕方がないのに、胸が痛くてしょうがない、あの病みたいな感覚を表す言葉。