元々財団法人と深く関わっていた俺と、エルザの家族を除いた全ての人間からは、エルザの記憶は失われ、まるで最初からエルザの存在が無かったかのように時間は流れている。


スマートフォンから、テレビから、パソコンから、電車やバス、そういったあらゆる電気の通った機器を通し電磁波を流し、エルザの記憶はこの世界から緩やかなようで性急に奪われた。


いや……奪われた、は間違っている。


奪ったんだ。俺が財団法人に関わって初めての任務だった。エルザの、記憶を奪う電磁波のプログラミングが。


親友をこの世界から跡形も残さず消し去るプログラムを作り流す。


それが、失うまでに何も出来なかった俺への罰だ。


大きな禊を受けた俺。それでも、俺の中のエルザの記憶を失わずに済んだのが、罰の苦しみよりも大きな救いをもたらした。


なぁエルザ、お前はこの結末に納得してくれているだろうか。優しいお前は、俺からも忘れられる事を願ったに違いない。