暖かな教室から廊下へ、廊下から中庭へ繋がる窓を乗り越えると、冬の匂いがした。


死ぬ思いをして負った怪我も、一カ月としないうちに元通りになり、それから二カ月の月日が目まぐるしく過ぎて、じきに、この学校を卒業する日を迎える事になる。


どんなに辛くても、苦しくても、時間は平等にしか動かない。


「和真!お前また此処にいたのー?うわぁ、さっぶ!」


「ああ、荘司か。……何でだろうなぁ。此処にいると、何だか愛おしいような、悲しいような、不思議な気持ちになるんだ」


家族のように長年隣を歩んで来た筈の和真は、以前よりもぐっと女っぽくなったと思う。この間、クラスメイトの野郎共がそういう類の話をしていたから殴ってやったのを思い出してしまう。


あの日……この中庭でお前を失ってから、もう三カ月経ってしまったというのに、俺は何も変わっちゃいない。


三カ月前の十一月二十六日……俺の大切な弟分で、親友で、家族みたいな存在の奴の恋人だった紫倉・ブルーム・エルザの、十六年と数ヶ月の人生はまるで息を吐くかのように穏やかに終幕した。