「エルザぁ!エルザ!エルザ!」


幻聴さえも聞こえて来てしまうだなんて、どれだけ僕は彼女を愛していたのだろう。


その幻聴は、徐々に僕に近付いてくる。そして、伸ばした僕の手をいつもみたいに掴んでくれるそれは、本当に僕の都合の良い幻なのかな。


「君は本物の馬鹿だ!私がっ……!君を嫌いになる訳ないだろう!?人間だろうが化け物だろうが、君は君だ!紫倉・ブルーム・エルザだろう!」


ああ、また泣いている。彼女はいつも僕の為に泣いている。僕は、彼女が泣くのは嫌なのに、どうしてか泣かせてばかり。


はたはたと落ちる涙は、僕の顔に落ち、僕の涙と溶け合って一つになって行く。


昨晩のように穏やかで、熱く熟して、甘ったるく。もう、どちらのものかなんて僕には分からない。


「君が生きられるなら、私を殺せ!お願いだ!死ぬ、なぁ……」


ああ、本当に本物みたいな事を言う幻だ。でも、幻でも、僕は貴女を吸血しないよ。


だから、僕が守った愛しい命を差し出すような事はしないで。その命を、どうか絶やさないで。辛くても、孤独でも、命をどうか全うして。


その命を自ら捨てるような言葉は、何よりも悲しい、から。