【完】ヴァンパイア、かなし



「……ねぇ、和真先輩」


けだるさと甘い痺れの残る体、触れ合う脚と脚を絡め、離れられないくらいにくっついた彼女へ、掠れる声で呼びかけた。


「ん?どうした、エルザ」


僕の知らなかった甘ったるい、くにゃくにゃに溶けたような声で僕の名を呼ぶ彼女の頬を撫でて、言葉を続ける。


「僕の知っている言葉で、今の気持ちが表せなくて。貴女といる事はこんなにも幸せで、貴女の事が可愛くて、愛おしくて堪らないのに、涙が溢れそうな程に寂しくて、悲しみに似た気持ちになるんです。……これは、日本語で表せますか?」


彼女の温もりが心地良い。呼吸をすれば彼女の香りでいっぱいになる。視界には、優しげに笑う彼女の顔が見えるのに、とても、今の気持ちは不思議なものだ。


この気持ちを、言葉にする事が出来ないのは悔しい。胸の鼓動にかき消されてしまうのが、どうしても惜しい。


和真先輩はゆるりと瞼を閉じて、猫が鳴くように小さな声を喉から出してごろりと仰向けになる。


「そうだなぁ……言葉にするとしたら」


毛布の下、シーツの上の互いの小指を絡め、和真先輩はしばらく考えるように押し黙った。