母が部屋から去った後、しばらくして和真先輩が毛布の中から顔を出した。


「ははは、危なかったぁ」


「ちょっと、笑い事じゃありませんよ。大体、どうやって家を調べたのです?」


言いたい事や聞きだい事は山ほどあるけれど、彼女の笑顔に全部が飛んでしまいそうだ。


そして、こんなに変わり果てた僕を見ても、何も変わらないその笑顔に安心してしまう。


「今日、あの非常勤講師の後を尾行させて貰った。あの人は少し抜けてるからな。ポロッと今日君の家に行く事を私に言ったんだ」


「あー……想像出来ます」


とは言ってもありさ先生はヴァンパイアだ。尾行なんかされても音で気付くだろうに。


しかし、夕方のあの様子だと何か探し物が見つかって舞い上がっているようだったから、気付かなくても仕方なかったのかもしれない。